「肇君!雅ちゃん!大変っ!」
血相変えてやって来た柏木さんは明らかに動揺していて、既に入っている観客も心配そうにしていた。
「香苗?舞台裏にいたの?」
結城君の質問にも答えずに「来て!」と私達を急かすので、何事かと2人で顔を見合わせ、舞台裏に向かった。
「衣装を1着忘れて来た?」
雑用係をしていた1年生が泣きながら謝罪を繰り返していた。
話によれば、学校で最終チェックをして荷物を車に積んだ際に衣装係が最後に完成させた1着が別の場所に一時保管していたことを忘れて置いてきてしまったらしい。
忘れて来た1着というのが、最後にヒロインが着るはずの無くてはならない鳳の衣装。

