「早いね?」
馴れ馴れしい言葉遣いは最早顔を見なくとも誰なのかわかってしまう。
私の横に座るなり、満足そうに真正面を眺めていた。
開場時間が刻々と近付いて来ると、落ち着きが無くなってきて脈拍も忙しなくなり始めた。
「なんだか、こっちが緊張してきた」
「先生が緊張してどうすんの」
「頑張ってるの見て来たからかな。自分のことみたいに思っちゃうのかもしれない」
「線引き、とか言って全然じゃん」
「これは生徒を思うが故なんだから」
「あー、そう」
私が生徒とか教師、と言うと途端に興味を失う結城君。
私は教師だし、あなた達は生徒なんだから何がそんなに気に食わないんだか。

