「私は大丈夫。メンタルは強いつもり」
「先生の大丈夫って全然アテにならない」
「何よそれ。大丈夫よ。結城君だって言ったじゃない。精神強いねって」
「あれ、褒め言葉のつもりでは言ってないけど」
「そんなのわかってるから」
結城君の嘘を思い出すと、まだ少し腹が立つ。
食い気味で返すと、結城君がクスクス笑う。
「わかりやすい、拗ね方」
「拗ねてないっ」
「そうかなぁ」
これ以上返すと、自分の理想の教師像から離れて行く気がして堪えた。
せっかく、学校では学校仕様の髪型に服にと、スイッチオン状態なのに素の自分との境界線が曖昧になりそうだ。
「私はもう行くから、仕事の続きしなさい」
ああ、何か違う。
先生らしく去ろうと思ったのに何か違う。
これじゃあ、ただの上から目線の嫌な先生だ。
「言っておくけど先生が中断させたんだからね」
「・・・うん、ごめん。間違えた」
「間違えた?」
「お願いだから、気にしないで。じゃあ、頑張って」
「変なの」
結城君の笑い声を黙って背中に受けながら生徒会室のドアを閉めて深く息を吐く。
失敗してばかりだ。
結城君に調子を狂わされた、と言いつつも本当はそれを理由に逃げてるんじゃないかと思う。
もしかして、私は教師に向いていないのかも。
そう思う気持ちを結城君を利用して、隠して見ないようにしているだけなのかもしれない。

