擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~



次の日の昼休みに結城君のクラスを訪ねてみると、生徒会室に行ったということらしい。

昼休みも熱心だこと。

自分の得することしかしない、と断言した結城君だけど、本当にそれだけなのかな、と疑ってしまう。

生徒会室のドアをノックすると、「はい」と結城君の声が短く返事をした。

「あ、ごめんね。邪魔した?」

ドアを少し開けて中の様子を窺うと、机の上に広げた紙から顔を上げた。

「別に、平気。何?」

結城君は眼鏡を外して目をこすり、また眼鏡をつけてから私に向き直った。

「演劇部の子からチケット、預かってきたの」

チケットを渡すと、「ありがと」と素直にお礼を言ってチケットに印刷された文字を見下ろしていた。

「そういえば、大丈夫なの?」

「え?何?」

「伊丹先生。嫌味言われてるらしいじゃん」

「何で、知ってるの?」

「演劇部の一部の生徒は知ってるよ。先生が平気そうな顔してるから訊くに訊けなかったらしいけど」


知ってたんだ。

伊丹先生も何だか不憫な人だな、と思う。

私にだけ嫌味を言っていたつもりでいたのに、生徒にはバレバレだったなんて。


集団生活の中で過ごしていると、周りの空気感というものが何となく、察知できるようになってくる。

教師が思っている程、生徒はそういうことに対して敏感だ。