若干温もりのあるシャツを手にしてボタンを縫い付ける作業に集中した。
「イッタイッ・・・!!」
集中したつもりだったけど、やっぱり完璧な平常心を取り戻すことはできていなくて、親指に針をブスリと刺してしまった。
「刺しちゃったの?」
「平気」
口に指を含んで結城君を睨み付ける。
針で刺してしまったことを結城君のせいにしても、いいだろうと私は思った。
「見せて」
結城君は私の腕をとって、怪我の具合を確認し、「ん、平気そうだね」と頷いた。
「先生まで怪我したら困るんだよね」
その言葉に、奇しくも反応してしまったけど、結城君の本心は使える物と判断した私が使い物にならなくなっては困るといったところだろうか。
結城君の言葉遊びには乗せられてたまるかっ。
「衣装作りは最後までやるから心配しないで」
素っ気なく返して、結城君の手を振り払うと、絆創膏を指に巻き付け、再開した。
ボタンを縫いつけたシャツを結城君に渡すと、「ありがと」と素直に礼を言われて照れ臭くなった。

