「ちょっ、ちょっと待って!」
自分の部屋を守るかのように両手を広げてドアの前に私は立ちはだかっていた。
「私の部屋でやろうって言うの!?」
私は仕事を終わらせて帰るため、先に結城君は帰宅したが、私が帰宅した時にチャイムを鳴らしてくれと言われていた。
そして、結城君が部屋から出てきて「じゃあ」と私の部屋の前に立ったのが事の発端。
「俺の部屋がいいの?大胆だね、先生」
「そ、そうじゃなくって!!」
不敵に笑いながら「入る?」と自分の部屋を指差すので、私は激しく首を振った。
「それじゃあ、どこでやるの?衣装作り」
衣装作りを手伝うと言ってくれた結城君は私から自分のやることを教わったらすぐに帰るし、今日は作業するなと結城君に釘を刺された。
「ファミレスとか行こうよ」
「何その、危険行為。知らないよ?生徒と噂になっても」
「そ、そっか・・・」
この辺りもうちの高校の生徒がうろついているし、それは場所を変えてもリスクが低いというだけでゼロでは無い。
「だったら、校内にしようよ」
「嫌だよ。服飾なんてやったこともないことを誰かに見られたくない」
何でも完璧にできる優等生のプライドだろうか。
これくらいは、可愛らしい虚栄心かもしれない。
結城君は苛だたしそうに今にも部屋に入って来そうな勢いなので、私は仕方なく折れる事にした。
「そ、そこで待ってて!」
結城君をその場に置いて、するりと自分の体をドアの隙間から滑り込ませて一旦鍵を閉めた。

