「面白くないなぁ。こんなことで落ち込むの?」
「落ち込んだ」
「弱っ」
「でも、自分が浅はかだって気付いたから、同じ事は繰り返さない」
目眩もだいぶ良くなってきたので、ゆっくりと起き上がると結城君が不思議そうな顔で私を見つめていた。
「良かったわ。演劇部に迷惑かける前に気付かせてもらって。私、ハマると周りが見えなくなることが良くあるんだよね。結城君は俯瞰して見られるのね。それって、羨ましいかも」
保険医はまだ来ないようだけど、立ち上がっても問題なさそうだったので、結城君にお礼を言う。
「要領良くやる方法、思いついたの?」
「それはこれから考える」
「そんなの、簡単だよ」
結城君も立ち上がると、私は見上げる形になる。
簡単な方法とは何なのか、結城君はわざとなのか間を置くので、眉根を寄せる。
「俺が手伝う」
「え?だって、メリットが無いと動かないんじゃ・・・」
思ってもみない言葉に目を丸めると、結城君は「そうだなぁ」と思案しながら無機質な天井に視線を向けていた。
「試しに、感情で動いてみようと思った、っていうのはどう?」
「どう?って・・・」
訊かれても、言ってる意味が良くわからない。
「実験だよ。先生が言った言葉の証明を自分でやってみることにした」
冷めたような言い草なのに、今回に至ってはふてぶてしい感じは一切しない。
私の言葉で少しでも結城君の心が揺れてくれたのだろうか?
都合良く考えようとしてしまうのは、私の悪いところなのかもしれない。

