挨拶を交わして徐々に学校から去って行く卒業生を見送り、物悲しさを感じながらも職員室で仕事を少ししてから帰宅すると、スマホに結城君から画像が送られて来ていることに気づいた。
その画像は卒業生を外で眺めながら、私と結城君が並んで話している時の写真で、2人して穏やかな微笑を浮かべながら、爽やかな日差しを受け、春の風に髪が揺れていた。
被写体が自分であることにも関わらず、綺麗な写真だな、と純粋に思った。
でも、誰がこれを?
その時、タイミングを見計らったかのようにチャイムが鳴った。
部屋着に着替え終わっている結城君が部屋に入って来て、写真の事を訊く。
「いい写真撮れた、って香苗が送ってきた」
自然と撮れてしまった写真なんだろうか?
柏木さんはこの写真を撮って何か思う事はなかったんだろうか。
「俺が香苗の事フッたの知ってるんだよね?」
「・・・成り行きで」
「その時、好きな人いるのかって聞かれて、諦めてもらうために、いるって答えたんだよね。その時は本当に断る口実で言っただけ。先生の事を言ったつもりじゃなかった」
テーブルの前に座った結城君にコーヒーを淹れる為に私はキッチンに立って結城君の話を聞いていた。

