「寂しいんですか?」
遠くから生徒達の様子を眺めていると、横からふわりと声をかけられる。
「とても」
隣に立った結城君はさっきまであちこちで後輩女子達に捕まっては写真撮影をねだられていた。
「戻らなくていいの?きっと探してる女子生徒がいるよ」
「ひとまず避難。うんざりしてきた」
「でも、善良な笑顔で全てに応えるんでしょ?」
「最後までそこは貫かないとね」
さすかの完璧主義だな、と苦笑する。
「先生」
「ん?」
「同盟解消しよっか」
「それは、どういうこと?」
解消イコール秘密の暴露、と直結したものの、そんなことはないか、と思い直す。
「だって、もう必要ないでしょ。そんな口実作らなくたって、お互いのこと信じられる関係なんだから」
「それもそうね。・・・だったら、いつかのコスプレ写真を消してくれる?」
「それはダメ」
「何でよ。脅しネタなんてもう必要ないでしょ」
「だってあれ可愛いじゃん」
そんな自然な口調でさらりと言われると、許したくなりそうなってしまう。
遠くから結城君を発見するような声が聞こえて、「あ、見つかった」と小声で言うと結城君は笑顔を貼り付けた。
「そう言えば、先生は許してくれるかなって」
心の中を読まれたのかと思った。
「またからかったのね」
「うそうそ。からかってないよ。ほんとのことだから」
背中越しにそんな言葉を残していくなんて、卑怯だ。

