「これが、明確な理由でもあれば応援するんですけど、就職したいからって言うばっかりで、理由を教えてくれないんです」
「お金ですかね?両親が倒れられたり?」
「結城の両親は公務員ですし、体も健全ですよ。それに、奨学金制度もある」
浪川先生は深い溜息を吐いて、頭を抱えてしまった。
結城君が就職に拘る理由なんて、もう無くなったと思ったのに。
「何だか、結城君って最近変わったなぁって思うんですよね」
「どこがですか?」
美原先生は口を尖らせた状態で、「んー」と唸りながら眉根を寄せた。
「具体的にどこっていうのはわからないんですけど、前はもう少し柔らかい感じだったのに、最近はトゲトゲしてる?みたいな。
明らかに他の人と一線引いてるような、第三者的目線?って言うんですかねぇ。冷静に分析してそうですよね、結城君って」
結城君は、もしかしたらあの時に私だけではなく、全てに対して不信感を抱いたのかもしれない。
何も信じられない気持ちが、明らかな一線を作り出している・・・?

