「はぁ・・・、参りましたよ」
浪川先生は苦笑しながら椅子を引いた。
「早速問題ですか?」
浪川先生はそのまま2年生だった生徒達と共に持ち上がり、クラス替えをした3年生の担任を受け持つことになっている。
3年生といえば、受験本番。
気苦労が絶えなさそうだ。
「問題ですよ。全く・・・、前担任からは引き継いでいましたけど、どうしてあんなに頑なかな・・・」
「あー、結城君ですかぁ」
その名前を聞いて、ドキリとした。
結城君とは、あれから本当に必要最低限の話しかすることがなくなった。
アパートでも、会うことがほとんど無い。
最初の頃に、戻っただけだ。
在るべき姿に戻った。それだけのこと。
「結城君がどうかしたんですか?」
「進学しないって言うんですよ」
「え・・・」
どうして・・・?あの時、解決したんじゃなかったの?
喉まで出かけて、慌てて飲み込んだ。
「絶対勿体無いと思うんですよ。結城なら有名大学だって狙えるだろうに」
ほら。
誰だってそう思う。
結城君は教師のエゴだとか言っていたけど、少しでも良い選択肢に導いてやりたいと思うのが教師だ。

