擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~



職員室に戻ると、机に突っ伏した。

「お疲れ様でしたー。どうでした?初対面は」

今日ばかりは美原先生もスーツ着用だが、フリルのついた白いスーツで、体育館で行った入学式では主役の生徒達よりも目立っていた。


「緊張し過ぎて何が何だか・・・」

「結局、顔と名前は全部覚えて来たんですか?」

「覚えましたよ。必死で」

「さすが、真面目の極みの芹沢先生ですねー」

「それって、褒めてるんですか?」

「褒めてますよー」

何だか小馬鹿にされたように感じるのは、気のせいだろうか。


「それに、今年から演劇部の顧問にもなったからって言って、いろいろ本買ったり舞台見に行ったりしてたんですよね?」

「何で知ってるんですか、それ」

「えー、だって、机にやたらそういう本あったし、たまにブツブツ言ってたし、舞台とかも行っちゃいそうだなーって思っただけです」


後の方は想像だったらしいけど、当たっているから怖い。

3月で演劇部と美術部の顧問をしていた伊丹先生は別の高校に転任してしまった。

その後釜に私は指名されたわけだけど、今更ながら伊丹先生が兼任で部活を見ていたことを尊敬した。

嫌味な人ではあったけど・・・。


春休みもほとんど休み無く稽古をしていた演劇部を、演劇など何も知らない素人が口出しできるようなことなんて無かった。


去年まで部長をしていた子は卒業してしまったけど、後を継いだ子がしっかりと部員をまとめて引っ張り、指導している。

これだけしっかりした部活だと、少々任せっきりになりすぎていた伊丹先生の気持ちもわからないでも無い・・・。