「それ、本気で言ってる?」 「本気よ」 「・・・そう。すっかり騙されたな」 結城君は一変してくつくつと笑い始めた。 「先生のこと、嫌いになりそうだよ」 そうやって、恨めばいい。 私とのことで、順風満帆な結城君の人生を変えるわけにはいかない。 結城君が進学を諦めてまでも私のことを考えてくれていた、とわかっただけで、充分だ。 「じゃあね。先生」 「また明日」 じゃあね、と言った結城君の声は酷く冷たい余韻を残していった。