擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~



時間をかけて瞼の腫れを取っていると、回していた洗濯機が少量のアラームを鳴らした。

カゴに詰めた洗濯物をベランダに出すと、「おはよ」と清々しい顔をした結城君があろうことか、煙草を吸っている。


「煙草っ・・・!」

「先生が俺と付き合ってくれるなら辞めること、考えてあげてもいいけど?」

「っ・・・!卑怯者っ!」

クスクスと笑いながら、灰皿に煙草の先を押し付けた。

「目が酷いことになってるね」

手早く洗濯物を干しながら、「知ってるから!」と無意味に声を荒げてしまった。

「そんなに泣く程辛いなら、やめればいいんだよ。グロスとかつけてめかし込んで無理しちゃってさ。本当の先生は頭にチョンマゲした上下スエットのダサ女じゃん」


あなた・・・、私のことが好きだって言ってなかった?

この言われようは何なの?

その通りだから、何も言い返せないけどねっ!!


「付き合う相手にも偽った自分でいるわけ?」

「そうかもね」

「それって、疲れない?」

「結城君にからかわれてる方が疲れる!」

「好きな子程、構いたくなっちゃうタイプでね」


洗濯物を干している間、背中を向けていたけど、部屋に入る前にもう一度釘を刺しておこうと思って振り向いた。

「私は結城君の気持ちには応えられないからね」

「絶対?」

「絶対」

「言ったね」

「言ったよ」

何故か結城君は楽しそうに笑う。

「それは、張り合い甲斐があるな」

何を企んでるのよ・・・。


結城君が何を考えているかわからないことに、これ程恐れをなしたのは初めてだ。