「ちょっ・・・、鼻で息してよ」
ぐったりとした私を見て、思いの外慌て始めた結城君。
図らずも、解放されたけど若干の酸欠で苦しい。
「いつ息すればいいとか知らない、し・・・」
「したことないの?」
「・・・あるよ」
結城君は楽しそうにしながら、「そっかそっか」と上機嫌だ。
「俺が先生のファーストキスの相手なわけね。なんなら、もっと忘れられない思い出にしてあげようか?」
私の顎に長い指を当てがい、口元に笑みを浮かべた。
こんな顔ですら、綺麗なんだから腹が立つ。
腹が立つのに、顔は熱くなる・・・。
「結城君・・・。私は結城君の気持ちには応えられないよ」
「予想の範疇だけど、そんなこと」
「だったら何で」
「抑えておくつもりが、抑えられなくなったんだよ。先生が、泣いたりするから」
「それは・・・、結城君に嘘ついたってどうせ白状させられるだけだしって思って・・・」
「賢明な選択だったね」
やっぱり、ムカつくな・・・。

