落ち着いた頃に、今は使っていない空き教室に場所を移動した。
涙は止まったものの、柏木さんの目はまだ赤く、みんなのところには戻れないと言った。
「私の好きな人、わかっちゃったでしょ?」
「結城君、だね」
「大当たり」
平気なはずは無いのに、お茶目に「ピンポーン」と効果音を付けた。
正直、もっと前から柏木さんが結城君のことを好きなんじゃないかとは思っていた。
確信に変わったのは、生徒会室から出て来た柏木さんが今にも泣き出しそうな顔をしていたからだったけど。
「噂通りだったなー」
「噂って?」
「肇君ってモテるけど、誰とも付き合う気が無いんだって」
「え、今までもそうだったってこと?」
「高校入る前はわかんないけどね。肇君ってそういう話になると、逃げちゃうんだもん」
イメージがある以上、逆ナンされて持ち帰ったことなど言えないんだろう。
そんなこと言われた方もショックだろうけど。

