擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~



生徒会室が見えて来ると、ちょうど柏木さんがその部屋から出て来るところだった。

「柏木さん」

声をかけると、びくりと肩を跳ねさせ、過敏に反応した。

「雅ちゃん、かー。ビックリした」

「打ち上げ始まっちゃったよ。生徒会の仕事、終わったの?」

「うん。終わった。だけど、もう少ししてから行こうかな」

「どうして?何か・・・」

柏木さんに近づいて行くと、薄暗くて見え難かった柏木さんの表情が徐々に鮮明になってきて、思わず声を飲んだ。


「柏木さん・・・」


「はは・・・。フラれちゃった」


未完成な笑顔で発せられた声は虚しく空気に溶けていく。


「柏木さん。無理に笑わなくたっていいんだよ?」

「雅、ちゃ・・・」

声になりきれなかった言葉の代わりにせき止めていた涙を流して、肩を震わせた。

その華奢な肩を抱くと、小さく泣き声を漏らしながら、私の背中に手を回して顔を埋めた。