「前言撤回っ・・・!」
職員室に戻って来て早々に机に突っ伏すと、丁度授業を終えて帰って来た美原先生が「何のことですかー?」と間延びした声で訊ねてきた。
美原先生に対しては生徒の好き嫌いがあってはならないと指摘した。
好き嫌いを作ってしまうと、贔屓なんかの対象になって生徒を公平に評価できないからだ。
でも、公平に評価することを条件とすれば、心の中に秘めておく分には苦手な生徒がいてもいいんじゃないかと思った。
まぁ、これも結城君から距離をとりたいと思う自分への保身なわけだけど。
「何でもないですよ」
美原先生に悟られないように、にこり、と微笑むと提出された宿題の採点に入った。

