町内を回り、先発したクラスから順々に学校に戻って、着替えや休憩をとる。
休み無く歩き、飛び跳ね大声をあげていたにも関わらず、生徒達は意気揚々と体育館に集まってくる。
私なんかはこんなに歩くのは久しぶりで、筋肉痛になりそうだ。
これから、体育館に設置した舞台上で様々な催し物が開催される。
演台に上がる生徒達はコスプレ衣装を脱ぎ、また別の衣装に着替えたり準備をしたりと慌ただしいみたいだ。
私は急いで着替えを済ませてから、体育館の入り口で生徒達を促す。
「入り口付近で止まらないようにー!」
頭の中は文化祭のことでいっぱいで、喋りながらやって来る生徒に声が届いているのかは不明。
「大変そうですね。手を貸しましょうか?」
向かってくる生徒集団の中に、笑顔を貼り付けた結城君が首を傾げた。
「大丈夫よ。結城君こそ、これから出番なんでしょう?」
制服では無く、白いシャツに黒いスラックスを着て、手には黒のハットを持っているから結城君も何か舞台でやるつもりらしい。
意外とこういうのには積極的なんだな。
「何ですか?」
訝しげな目を向ける結城君はやっぱり只者じゃない。
リップグロスを拭い取られたこともそうだけど、何もかも結城君の手の中を転がっているだけのようで、何だか面白くない。
「何に出るの?」
「それは、見てからのお楽しみってことで」
ハットを深めに被ると、外行き用の笑顔を作ってみせてから、体育館に入って行った。

