「生徒会の仕事?」
話を切り替える為に、平静さを装う。
「うん。先生は?」
墓穴ッ!!
「ん、えーと、」
「飲んでるし、珍しく色気付いちゃってるし、もしかしてデート、とか」
考えているうちに結城君が口を出し、無防備な状態で言い当てられてしまい、体が固まった。
「あ、図星だ」
「ち、違っ・・・!」
「へぇ、デート。誰と?」
「か、関係ないでしょ!」
「あ、認めた」
「認めてないっ!」
馬鹿だ、ほんと。
こんなの、大当たりですよ、と言わんばかりじゃないか。
これ以上、結城君と話していたらいらないことまで喋らされそうだったので、逃げるように他の車両に移った。
自宅近くの駅名をアナウンスで確認し、降りると階段の上り口で結城君と鉢合わせる。
「馬鹿なんだから、ってこういうこと?降りる駅、一緒なんだから逃げてもこうなるに決まってるじゃん」
人を小馬鹿にしたように、笑っている。
叶うことなら、この顔にビンタしてやりたい。
結城君よりも先に進もうとすると、私の腕は後ろから捕まえられた。
「今度は逃がしてあげない」
「な、何・・・」
「だって、先生が1人で夜道を歩くのは見過ごせないし」
どうして彼はこうも、人をどきりとさせる含みのある言い方をして、私を翻弄するんだろう。
お願いだから、最初から普通に「危ないから一緒に帰ろう」って言ってくれないかな。
それとも、これもいつもの確信犯?
「観念した?」
「・・・した」
呟くようにそう言ったら、結城君は素直に手を離してくれた。

