黒板に数式を書き込み、黄色のチョークで重要な箇所を強調させる。
「それじゃあ、この問題を・・・28日だから、28番の人」
「はい。僕です」
立ち上がった生徒を見て、自分の運の悪さを呪った。
指名する前に28番が誰なのか確認しておくべきだった。
「結城君。前に出てこの問題を解いてくれる?」
冷静さを欠かないように努めながら、結城君を前へと促した。
眼鏡を中指で押し上げて、黒板の前に立つと几帳面な字で何の躊躇いもなく数式と解答を記した。
「正解です。ありがとう、結城君」
書かれた数式の前に立ち、結城君には席に戻るよう視線を送った。
「俺のこと、そんなに気になるの?」
すれ違い様に結城君はぼそりと呟いて不敵な笑みを浮かべ、何事も無かったかのように自分の席に着席した。
他の生徒がいる手前、あからさまな態度をとることができず、拳を握って辛うじて気持ちを押さえ込んだ。

