浪川先生と共に朝のホームルームを終えると、1時間目の数学を行う教室に向かった。
教室のドアを開けると、慌ただしく生徒達が自分の席に座り始め、日直の声と共に全員が立ち上がって礼をした。
その間、私の目に留まっていたのは品やかに一連の動作を行う結城君の姿だった。
いつもと変わらない真面目な結城君であるはずなのに、今はどんな動きをしていても何かを企んでいるように思えてしまう。
「どうかしました?芹沢先生」
私の視線に気づいたのか、結城君がさも心配しているかのように首を傾げた。
「何でもないですよ、結城君」
「そうですか。気分でも悪いんじゃないかと思いましたよ」
体調面では問題ないけど、精神面ではあなたのせいで波打ってますけどね、と結城君を見つめる視線に宿した。
その訴えが届くはずも無いのに、結城君は誰にも見られていないことを確認してか小さく舌を出して挑発してきた。
「24ページを開いて」
デビル結城を視線の端に追いやって、教科書を開いて無理矢理、勉強モードに切り替える。

