ひとまず、私の第一関門は先輩の前で擬態化を貫き通すこと。
「この前、電車で会った時と雰囲気違うね」
「あの時は、急いでたから全部適当だったんです」
それに引き換え、今日の服はこの日の為に考えた物だし、化粧も私の最大限。
極め付けは美原先生から貰ったグロスだ。
エロティックを求めたわけではないけれど、大人っぽく見せたかったので、人差し指で一塗りだけしてきた。
「変な感じだな。中学のイメージしかないから、いきなり大人になった芹沢が隣にいるみたいだ」
「それは、私もですよ。いきなり大人の先輩に会った気がします」
「あのさ、その先輩ってやめない?」
「え?」
「俺と芹沢は先輩後輩なんだけどさ、違和感あるんだよなぁ。見た目は大人になってるのに、呼び方は中学の頃のままって思うと」
「じゃあ・・・、佐久間さん?」
「ああ、うん。そっちのがいいな」
「何か、変な感じです」
「これから慣れていけばいいよ」
まるで、この先もあるような言い方だ。
佐久間さんの横顔をちらり、と見ながら胸が高鳴った。
ああ、ダメだ。私、全然吹っ切れてない。

