金曜日、待ち合わせ場所の時計台の前は私と同じように時間や周りを気にする人が多くいた。
10分前に着いたけれど、佐久間先輩を見つけて駆け付ける方が良かったな、と思う。
私は待っている間、ぼけっと突っ立っていることも、真顔で携帯を弄ることもしなかった。
どこから来るかわからない先輩に、気の抜けた顔を見られるのは避けたい。
だけど、私は難なく走って来る先輩を見つけることができて、微笑を浮かべて出迎えた。
「悪い。待たせて」
「少し、早く着いただけです。まだ時間になってませんよ」
「あ、ほんとだ」
今日の佐久間先輩の格好は、グレーのスーツに皺がしっかり伸ばされた白いYシャツ。
腕まくりをした腕が日に焼けて逞しさを強調している。
「店、勝手に決めちゃったんだけど、そこでいい?イタリアンなんだけど」
「はい。イタリアン、好きです」
「良かった。じゃあ、行こうか」
イタリアンが好きなのは事実だけど、正直そういうオシャレなお店に行くのは久しぶり過ぎた。
基本的に引きこもりだし、皐月と行くのは決まって居酒屋だ。それも、ガヤガヤ煩い大衆居酒屋系。

