「やってみ?左手はボールの横に添えるだけ。右手を使ってボールを押し上げるみたいに」
「え、え・・・?左手は添えるだけで、右手を・・・」
「右腕、外に開き過ぎー。脇締めて」
「脇を、締める」
「おお、いいじゃん。カッコイイ。ほれ、そのまま投げてみ?」
「え、えいっ!」
私が放ったボールは佐久間先輩が作るような放物線は描かずに、真っ直ぐに飛んで行った。
「おっ・・・とと、」
先輩は頭の上を通過しかけたボールに両手を伸ばしてキャッチする。
「難しいですね・・・」
「何本も練習すれば、芹沢だってできるようになるよ」
「・・・私でもですか?」
「できるよ。興味湧いた?」
「とても」
佐久間先輩が好きなバスケット。
私はただ、見ているだけで良かったけど、佐久間先輩がこんなに無邪気に笑って話すなら、その快感というものがどんなものか味わってみたくもなった。
「朝とか部活前とか、俺いるから気が向いたら来いよ」
「え?」
「芹沢にも打たせてやるよ」
佐久間先輩は立ち上がって、ドリブルしながらフリースローの位置へ。
そこで、例の構えをして、右手でボールを押し上げる。
ボールは放物線を描いて、リングに触れずにネットを通過して行った。
「きれい・・・」
先輩のフォームも、ボールが描く放物線も、ネットを通過する乾いた音も。
「だろ?」
自然と漏れた言葉に佐久間先輩は嬉しそうに笑っていた。

