中学1年の夏ーーー
床とバッシュが擦れ合って、キュッ、キュッと小気味いい音が響く、まだ部員の揃わない体育館。
佐久間先輩に対して、2人のデイフェンスがゴール前を塞ぐ。
既に汗の玉が浮いている先輩は、ゆっくりとした動作でバスケットボールを床に打ち付ける。
ダム...、ダム...、ダムーーー
一定だったその音は、急に速いリズムに変わる。
2人の部員は、腰を低くして、佐久間先輩を捉える。
右手、左手、また右手。
ボールを自在に操りながら2人を翻弄し、振り子のようにボールを持ち替えよう、と思わせてそのまま2人を抜き去り、レイアップシュート。
パスンッ、と綺麗にボールがネットを通過する。
ふわりと着地した佐久間先輩は振り返って「フェイントだ、バーカ」と無邪気に笑った。
とくん、とくん、とゆっくり波打つ胸に手を当てて、先輩の華麗なプレーをいつまでも見ていたいと思った。
先輩のこと、好きだなぁ。
そう思った瞬間。

