「あ、それ、持って行きますよ?」
プリントの山を抱えると、結城君は私の手からそれを奪って教室を出て行った。
「大丈夫よ、それくらい。持てるから」
手持ち無沙汰な手を差し出しながら結城君の隣に並ぶ。
「怒ったの?この前のこと」
後ろにも目があるのかと思ってしまう程、結城君が本性を表す時は何の前触れも無い上に、しっかりと他の生徒から遠ざかっている場所だ。
「怒っては、ない」
「じゃあ、どうして避けるの?」
「どうして、って・・・」
「どうせ、距離置こうと思ったんでしょ」
分かってるなら、何で聞くのよ。
その言葉を飲み込んだのは、生徒達が向こうから歩いて来るのが見えたからだ。

