「芹沢って、LINEとかやってる?」
「え、はい。やってます」
「そっか。じゃあ、これ検索して」
佐久間先輩は人だかりの上に手を出して、器用にメモ書きすると、それを私の鞄に突っ込んだ。
「何ですか?」
「俺のID。検索して連絡ちょうだい」
「え、はっ!?」
「あれ?不都合?懐かしくなっちゃってさ。話し足りないなって思って」
「そ、そんなことは無いです」
「良かった。社交辞令とかやめろよ?今度、飯でも誘うから」
「えっ!?」
私が頓狂な声を出しているのも気にせず、「ほら、着いた」と私の体を押してドアの方に送り出してくれる。
乗客の波と共にホームに吐き出された私は呆然と立ち尽くし、邪魔そうに眉をしかめている人々のことを気遣う余裕さえなかった。
な、何?どういうこと?
先輩が連絡してと言った真意も、ご飯に誘うと言った真意も私には理解不能だった。
でも、その答えが出る前に、自分が遅刻しそうだったことを思い出すと、ひとまず学校に向かうことにした。

