擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~



人には、隠しておきたい自分というものがある。

職場では趣味はお料理でお洒落が大好き、と女らしく振舞っている女が実は家に帰ると酷く散らかった部屋で平気に暮らしていた、ということがある。

それを、世間では「擬態化」というらしい。

人にはこう見られたい、という欲求から生まれた社会を生きて行くマナーを取り入れた擬態化した自分と、それに反した自分本位に生きる好き勝手な素の自分。

表と裏のギャップが激しい程、周りは裏切られたと感じるらしいが、裏を隠すことは社会に馴染むためには必要なこと。

私生活の一部を秘密にしておくことは、社会人のマナーであって、擬態化していること自体を批判される謂れは無いと私は思う。


水色のストライプシャツのボタンを上まできっちりと閉め、黒い八分丈のスラックスに足を通す。

ゆるく巻いた黒髪を後ろでまとめて、金色のバレッタで止める。

化粧は派手過ぎず、身につけるものは華奢な腕時計だけ。

生徒達を指導する立場として、恥じない姿でいることが私のルールだ。