結城君はスマートフォンを掲げて、お互いの頬がくっつきそうなくらいに距離を詰めてきた。
ジャンプーだか香水だか良くわからないけれど、結城君からほんのり甘い香りが漂ってくる。
「近いから!」
「だって、映らないじゃん。もっとこっち来てよ」
反対の手で私の肩を引き寄せて、「はい、チーズ」と呑気な声でボタンを押した。
一層、結城君と近付くと、私の鼓動が更にやかましく鳴り響く。
結城君に聞こえていない方がおかしいくらい、早鐘を打っていて、目が回ったような錯覚に陥る。
解放されると、一気に脱力感が襲って来て、がくり、と項垂れた。
「具合悪くなったの?」
「違うから、平気」
結城君の自由過ぎる無自覚か計算かわからない行動に振り回されっぱなしで嫌になる。
いい加減、慣れたい。切実に。

