「大切な人に....婚約者に、連れてきてもらったんです。」

「....!」


自分の口からそう言ったのに、なんだかとても恥ずかしいようなくすぐったいような気持ちになった。

少しの間反応が無かったのであれ?と思いお姉さんの方を見ると、なんだか驚いたような青ざめているような不思議な表情をしていた。


「あの....どうかしましたか?」
「此処を?教えてもらったの?」
「あ、はい....そうですけど」
「....そう、」


なんだか変な空気。
婚約者とか惚気たことを言ってしまったのが良くなかったのかな....。

この気まずい雰囲気に耐えらない。
とりあえず今日はもう帰ることにしようかな。正直、時間も気になる。
ここには改めてまた来れば良い。


「ごめんなさい。私、そろそろ帰らないと....」
「貴女、永遠にただ一人だけを愛し続けることって出来る?」
「え?」


「人間なんて愚かな生き物だから誘惑をされれば欲に負けて溺れることもあるし間違いを犯すことだっていくらもある。それを許す人もいればそうでない人もいる。....そうよね?」


「....すみません、ちょっと意味が」


いきなり訳の分からないことを話し始めたこの人に、私はなんだか不気味な雰囲気を感じてしまった。それに美人だから、尚更。


「ただこれだけは忘れないで。それを許さない存在の復讐というものは、貴女が想像している以上にとても深くて暗くて悲しいものなの....絶対に、忘れないで。」


何故だか私の方を一度も見ずに目の前の風景だけを見つめながら、そう言っていた。

私にはどういうことなのか全く意味が分からなかったけれど。

まるで、とても長くてストーリー性のある貴重な映画を見終わった時のような不思議な感覚にすっかりと陥っていた。