「はは、そうそう。はじめまして。」

ネクタイを緩めながらスーツのジャケットを脱ぎハンガーにかける。なんだかなめらかな動きをする人。


「ご、ごめんなさい、初対面なのに。あ、ええっと、今日からこちらでお世話になります、」
「さくらちゃん、だろ?」

ネクタイを外して微笑みかけてくれた。
なんだかやんわりと話してくれるから、拍子抜けしてしまう。蓮から聞いてたのか。


「あ、はい..。桜、と申します。よろしくお願いします」
「ん、よろしくな。これどうぞ」

手に持っていた箱を渡される。

「えっと、これは」
「プレゼント。開けてみ」


パッケージを見ると、蓮が買ってきてくれたオススメのケーキ屋さんと同じもの。

あれ、もしかして。



「あ、」



ホールの、ショートケーキ。
うそ。どうして。



「....仲良くしような、さくらちゃん」



胸の奥で何かが疼いた。
それでもそっと蓋を閉めて、気付かないフリをした。