「ルイコぉぉぉっ――! の、ペットの”パタ”! 行っけえええええ!」


マリは叫びながら、後方を指しました。
すると、ドドドドドッと大きな地響きと共に、かなり大柄なゴールデンレトリバーが駆けて来ました。


「パタ!」


どうやら本当にルイコのペットのようです。意外っちゃ意外。もっとなんかこう、大蛇とかタランチュラとかペルシャ猫とか飼っててもよさそうなキャラなのに。


パタくんはひらりと飛び上がりました。

朝の陽光を跳ね返し、ふさふさの毛なみが光り輝きます。
ちらりと見えた首輪の色が赤だと認識できる頃にはもう、パタくんはルイコの手から”例のアレ”を奪い取ってしまっていました。


「ふー……危なかった」


マリが間違ったため息をついていると、パタくんは颯爽と3人の元から遠く離れた場所まで駆けてゆき――要するに、逃走してしまいました。


「マァアアァアリイィィイイィ!?」


母音伸ばしすぎてマとリの字を見つけよう★みたいな感じになっちゃったよ。


「うえ? あれ? え?」


懐かしきはんにゃ顔のルイコ。恐ろしくって見られたものじゃありません。

おーばかマリちゃんは感謝されると思っていただけに力いっぱいきょどっています。


「あんた、何してんの? あれ見なさいよ!」


ルイコの指した先では、パタくんがガフガフと”例のアレ”を食べていました。ルイコの視力はマサイ族どころじゃないので見えるんです。