「あ……」


ルイコは一瞬ためらったのち、涙目でコートを飛び出しました。


コートに残されたのはヨシ君と、呆然としているマリ。

静寂が場を支配しました。


「……マリ」


冷たいヨシ君の声に肩を震わせるマリ。


「ちょっと言いすぎじゃねえ? ルイコ、少なくとも今は真剣だったと思うけど」

「そ……れは……」

「ルイコ探してくる」


ヨシ君は眉をひそめてみせてから、ルイコを追いました。


「待ってっ……! あっ……」


マリの手から滑り落ち、乾いた音を立てて床に落ちたラケット。

マリは大事なラケットをも気にせず……ああ、どこまでこの(一応)主人公はKY炸裂させれば気がすむのでしょう。
このシリアスな場面で、こけるふりして悲劇のヒロインぶっておりました。