やっぱり、いやいやながらも試合に出ることにしました。

試合まではあまり時間がありません。毎日特訓です。


(ヨシ君に、すごいって思わせなきゃ。私が勝っちゃったりしたら、私と同じくテニス狂のヨシ君は私のこと好きになってくれるんちゃいまっかー……)


なんて妄想力全開のマリは、とんでもないことに気がつきました。


「私のペアは、恋敵のルイコ……私のペアが勝ったら、ルイコのことだって好きになる可能性あるじゃん! どーしよーっ! ……なんとしても、ルイコに悪い印象が残るように仕向けなきゃ!」


マリちゃん、気づいていないのでしょうか。
開始2ページからすでに、読者様に青春物の主人公にあるまじき最悪の印象を与えてしまいました。


「あっ! でもヨシ君、あたしに声かけてくれたし! だったらまだ望みはあるんじゃ……」


ヨシ君がルイコに声をかけていない根拠はどこにあるのでしょうか。


とりあえずは家に帰ろうとスクールを出た瞬間、

ドンッ


「きゃっ」


ん……? デジャブ……?


「いててて……」


ぶつかった相手はまたもヨシ君。

そう思ってよく見ると、ヨシ君を押し倒しちゃってます。きゃあー


(ひーー!)


マリはクラクラとそのまま失神……


それをこそっと電柱の影から見ているどこから見ても不審者的な人間は、ルイコでした。