ある男子高校生の恋愛事情



通行人の邪魔になるじゃないか

「なに?早く行こう」

「ちょっと後ろ向いて」






――――キュッ


え?


視線を下げれば千夏の手が見えた




「怒ってるでしょ」と後ろからギュッと手をまわして
オレのお腹まわりのTシャツを握っている


「…怒ってない」


「ほんとうに?」

「本当に。ちょっといじけただけ」



するとオレの横っ腹と腕の間から顔を出して

「ごめんね」と言って笑った




………なんてヤツだ

そんなことされたら

許すしかないじゃないか




「いいよ。もう」と少し顔を逸らした

だって

嬉しいやら恥ずかしいやらで

顔を直視できなかったんだ



「まだ、いじけてるな~」

「いじけてないよ」



クスっと笑って「かき氷はメロンにしてあげるから」なんて

オレの好きな味を言うから

「じゃ、許す」とだけ言った