「ねえ、功司……」
「却下」
「え?私、まだ何も言ってないし」
「俺の写真を売ってうまいもん食おうなんて甘いんだよ」
「ぐぐっ……。むー」
あまりにも正確に私の企みを読み取った功司に悔しさの唸り声を進呈しながらも、やっぱりこの男は自分の見た目の良さを自覚しているんだと実感する。
そして、私の心の声を読み取る才能に満ち溢れている功司に「あっぱれだなあ」と密かに誉め言葉を綴ってみる。
功司とは高校一年の時は同じクラスだったけれど、二年生と三年生の時にはクラスが離れてしまった。
ずっと私の側にいた功司と違うクラスになってしまったと知って、同じようにクラスが分かれてしまった信吾のことよりもずーっとずーっと悲しいなあ、嫌だなあと思う自分に気づいた。
これからは授業中に功司が居眠りしている子供みたいな顔を見たり、女の子に囲まれてにやけた顔で「どうだ、俺すごいだろ」と自慢げに視線を向けてきた時にあっかんべーをしたり、そしてそして。
お昼休みに一緒にお弁当を食べることもないのかも、と考えて、体がずーんと重くなった。
クラス分けが発表されて各々新しい教室に向かう時、私は一緒のクラスになった亜季が言葉を失うほどの大泣きをした。
ぐすんぐすん、なんていうかわいらしいものではなく、「ぐおー、うぉーん」と獣が雄たけびをあげるようなお腹に響く泣き声は、今でも年に一度の同窓会でのネタになっている。
同窓会で酔った私もその時の再現とばかりにのりのりで雄たけびをあげ、そして翌朝後悔してるんだけど。
高二の春、功司とクラスが離れたことが悲しくてただ大声で泣いていた私。
その理由なんて誰にもわからなかったはずなのに、いつの間にか私の傍らにいた功司にはやっぱりお見通しだった。
さすがだ。

