苺なふたり






 私の気持ちを知りつつ信吾と亜季の仲を応援していた心苦しさもあったのかもしれないけれど、私を優しく見つめて温かさを注いでくれる功司の胸に飛び込んで、大泣きした。

 それはもう、功司の制服の白いシャツが私の涙と鼻水でぐちゃぐちゃになるほどに、泣いた。

 それでも功司は文句ひとつ言うことなくて。

『おいしいショートケーキ、おごってやるから元気出せ』

 男前な言葉で私の涙を止めてくれた。

 そして、当然のように私は功司にショートケーキをおごってもらい、信吾への気持ちの整理をつけようと、前向きに考えるようになった。

 一方、付き合い始めた信吾と亜季は、順調に交際を続け、先月結婚した。

 亜季の実家は内科を開業していて、亜季がお医者さんになるか、お医者さんと結婚して跡を継ぐと決められていたことを理由に、信吾は迷わず医学部に進学した。

 亜季は、それなら私は、と彼女もまた迷わず看護師となり、いずれは夫婦で病院を経営していくこととなる。

 ……らしい。

 まあ、信吾のお母さんも信吾のことが大好きだから、息子を嫁の実家に取られるような事を心から受け入れてはいないけれど、そうなるに違いないと思う。

 功司が言うように、サラリーマン家庭に生まれた信吾には、この先自分の力だけで開業医になる可能性なんて低いだろうしね。

 結局は、信吾は愛する人と素敵な未来、両方を手に入れた幸せ者だってことだ。

 高校時代から付き合いを続けて12年。

 二人の想いは結婚という形で一つ目のゴールを通過。

 そして昨日『ハワイ、良かったよー』という亜季からの電話により、ハネムーンも完了したと報告を受信。

 高校時代から二人を見てきた私と功司もほっと一息ついた。