苺なふたり




 ポーン。

 エレベーターが止まり、扉が開く。

 功司と手をつないでブライダルサロンに向かう私の足はもう震えていない。

 大切なもの、功司のことだけど、手に入れるために踏ん張らなくてはいけないのだ。

 衣装合わせだって、招待客のリスト作りだってなんだって、功司との結婚式のために、頑張ってみせようじゃないか。

 そう、私は功司にとっての苺ちゃんなのだから。

 功司が真っ先に食べて、自分のものにしちゃった苺ちゃん。

 そして、功司は私の苺くんだから。

 功司を誰にもとられないように、真っ先にその胸に飛び込んだ。

 あの日、私が功司に告白しながら号泣して、その胸をぐっちゃぐっちゃに濡らしてからずーっと、お互いがお互いの苺なのだ。

「あ、披露宴の料理、デザートはやっぱりショートケーキだよな?」
「もちろんっ」

 私と功司は顔を見合わせて大きく笑う。

 新郎と新婦も、ショートケーキ、食べることはできるのかな?

 当日目の前に置かれたら、たとえ主賓の挨拶の途中でも、まっさきに苺を食べてしまいそうだな。

 うーん、それって、どうなんだろう、やっぱりまずいかな。

 そんな事を考えている私の脳内は筒抜けだったのか、功司がにやりと口元を上げた。

「俺も、真っ先に食べるから、安心しろ」

 やっぱり、私の苺くんは、素敵なのだ。




【完】