功司といえば、いつも笑っていて、何が起きても「おもしれー」と受け流す余裕に満ちた男。
怒ったり、人を羨んだりする感情が欠如しているんじゃないかと思ったこともあるけれど、私は『あ、まずい』と思い、その場から逃げ出そうとしたくらいその時の功司はクールだった。
けれど、私に涼しげな視線を送る功司も素敵だあと、ぽわん、となったことは今も言っていない。
結局、大切なものを大切にし過ぎて、タイミングをはかっている間に大切なものはするするっと逃げ出したり、突然登場した『ヒロインちゃん』にかっさらわれることもある。
そんなことがあったら悔しすぎる。
というわけで、大切なものはとっとと手に入れろ、そういうことらしい。
私が信吾への気持ちを温め過ぎて、蒸発しそうになるまで抱え込んでいる間に、亜季という新しい登場人物に信吾はするりと持っていかれた。
それはショートケーキの苺にも似て、人生の教訓そのものだ、と難しい顔で語っていた功司の言葉全てを理解できたわけじゃなかったけれど。
何を言っても格好いいなあと、胸をときめかせていたこと、これも功司には内緒だ。
結論、ショートケーキの上のまるまる苺は、真っ先に食べなきゃいけないってこと。

