苺なふたり




 だって。

「百花、おいで」

 なかなか功司に追いつかない私に振り向いて、とてつもなく破壊力のある笑顔と共に手を差し出してくれる功司。

 その手に向かう私は手なずけられた子犬がご主人様が餌をくれそうだからきゃんきゃんと叫びながら駆け寄る姿そのものだし。

 幸せなんだ、すごく。

 カフェを出て、手をつないでエレベーターに乗り込んだ。

 18階「ウェディングサロン」を目指していざ上昇。

「苺、甘くておいしかったね」
「ああ、この季節はうまいよな、やっぱり」
「だねー。それに、縁起よく苺を真っ先に食べたから、ご利益があるに違いないよ」
「……くくっ。そうだな、きっといいことが目白押しで困るんじゃないか?」

 なんだか私の言葉を軽くあしらわれたような気がするけど、まあ、いっか。

 今日は大安だし、天気もいいし、功司は私がプレゼントした薄手のジャケットを着ているし。

 嬉しいことばかりだから、いいんだ。