苺なふたり





「そんな顔しても、かわいいだけだぞ?」
「かわいいのはいつもだもん」
「だな。俺はかわいくない百花を見たことないもんな」
「でしょ?」
「ああ。そのかわいい顔は俺だけに見せればいいから、無駄にふりまくな」
「……らじゃ」

 へへっと、笑う私の頭をよしよしと何度か撫でてくれた功司は、ふと思いついたようににやりと笑った。

「苺は俺のだからな」
「……わかってるもん」
「さっき、百花はいつもと同じように真っ先に苺を食べたから、やっぱり俺もいつもと同じように、真っ先に苺を食べるから」
「うん、食べて食べて」
「本当に欲しいものは、人に取られないように真っ先に手に入れないとだめだからな。
 ショートケーキに乗っているまるまる苺は何がなんでも真っ先に食べる。だな?」
「もっちろん」

 今もダイヤモンドのような強い心を呼び出して、たくましい自分に変身しようとしたけれど、そんな私の心なんて功司にはお見通し。

 功司に気のある素振りを見せる女の子たちに向ける私の切なさを一瞬にして砕いてくれるのも功司本人だ。

 人を羨んだり、嫉妬したり、できれば見せたくない後ろ向きな黒い感情も、功司は『かわいい、かわいい』と受け止めてくれるし、独り占めしたいと真面目に言ってくれる。