苺なふたり





「俺も、ショートケーキ頼もうかなあ」

 ぼんやり、うとうとしそうな時を、過去の照れくさい思い出と感情と一緒にさまよっていた私は、ふっと目を開ける。

 目の前でメニューを見ながら迷っている功司の呟きによって、過去よりも百倍幸せな今に呼び戻された。

 高校の時よりも今の方が格好いいな。

 ぐふぐふ、と漏れそうになる声をどうにか我慢し、それでも目の前の功司から目が離せない。

 私のだもんね。


「まだ時間あるよな?俺も、苺を食べておこうかな」

 私に言ったのか、それとも独り言だったのかわからなくて黙っている私に関知することもなく、功司は店員さんに『ショートケーキとコーヒーのおかわりをお願いします』と注文した。

 遠くから功司を見つめ続けていた店員さん、もちろん女性。

 顔を真っ赤にして注文を受けると、功司の前でぼーっとしている私にちらりと視線を向けながら背を向けた。
 

いいんだけどね、まあ、慣れてるし。

 功司のような見た目抜群の男の側にいると、不要な嫉妬にさらされて心はばきばき折れそうになるけれど。

 骨は折れると強くなるのと同様、私の心はダイヤモンド以上の強いものに進化した。

 それは功司の周りに次々現れる女の子の意地悪な感情に傷つかないための強い心。

 何年もかけて進化した強い心を確認しながら、ほんの一瞬だけ、功司を気にしていた店員さんをちらり、見た。

 見たというよりも、にらんだかもしれないな。