苺なふたり






 一瞬驚いたような目をして私を見つめた功司だけど、変わらず私の頭を優しく撫でてくれた。

 私と功司のやりとりに、半径5メートル向こう側にいる大勢のギャラリーの皆々様が、お腹を抱えて笑い出したのに気づいたけれど、そんなことはどうでも良かった。

 いつの間にか功司を好きになって、そのことに気づいた途端に告白なんてしてしまったけれど。

 そのことを当然のことのように受け止めてくれた功司の言葉の方がすごく大切で嬉しかった。

 信吾への長い初恋に撃沈し、自分の未来は真っ暗に違いないと、根拠のない自信と思い込みとともに半年以上を過ごした。

 そんな悲劇のヒロインちゃんを演じながらも休むことなく登校し、気づけば信吾とも亜季とも馬鹿笑いをしながら『また明日ね〜』なんて言いながら手を振って。

 学校って楽しいなあとスキップしながら下校していた私。

 信吾への気持ちに心をぶるぶると震わせることもなく、亜季といちゃいちゃ〜としているのを目の前にしてもちっとも心は苦しくなくて。

『百花、おいで』

 そう言っては私を傍らに置いてくれた功司との距離も近すぎるほどのものに変化した。

 信吾への思いを封印した私につけこんで、私の中のぽっかり空いた場所に一気に攻め入った功司の作戦だったと、後々聞かされたけれど。

『百花、おいで』

 と後光が差しているような眩い笑顔を向けられれば、私はいちころ。

 尻尾を振って飼い主に駆け寄る子犬のように、私は功司の側でくんくん頬ずりしていた。

 だから、『功司とずっとずっと離れたくないよー』と涙と共に懇願したのは多分。

 捨てられるのが嫌で、必死で飼い主にまとわりつく子犬ちゃんの気持ちと同じ。

 それは、私が功司から離れたくないという単純な思いからつながる恋心を、ようやく自覚した瞬間だった。