苺なふたり






 恥ずかしげもなく数回それを繰り返した私を、周囲の皆々様は半径5メートルくらいの距離をとりながら見ていた。

 自分の胸に飛び込んできた私を、功司は優しく包み込み、相変わらず飄々とした様子のまま満足げに頷いた。

『ん、上出来上出来』

 ぎゅぎゅっと功司の胸に張りついたまま動こうとしない私を無理矢理離そうともせず、嬉しそうな声でそう呟く功司を見上げると、ただでさえ格好いい顔が、一層格好良く見えて。

 どきどきする鼓動と功司を独り占めしたいという思いに満ちた私はそれが苦しくて仕方がなかった。

『好きになっちゃったよ。ちきしょー』

 思わず悔しがる私とは逆に、功司は淡々と私の背中を撫でながら。

『ようやく、俺の魅力に陥落したな。偉い偉い』
『ようやくってどういうこと?』
『そのままだけど?俺、入学式の時に百花を見てからずっと百花に惚れてるんだけど』
『うそっ』
『まあな。俺みたいに容姿端麗成績優秀なオトコが百花みたいにどこかずれてる、それでいて憎めない女の子を好きになるなんて、想定外だよな』
『それ、褒めてない』
『褒めてないし。だけど、結局俺は百花に惚れてしまった物好きなオトコで、百花を手に入れたいと願いながらそのタイミングを虎視眈々と狙っていたってこと。ほんと、お前って幸せ者だな』
『ん……?なんか変だけど。要するに功司も私のことが好きってことだよね?』
『そうそう。惚れてる惚れてる』

 あまりに軽すぎるテンポで言葉が返されて、「それはどうも、さんきゅー」と思わず口にした私。