『俺とクラスが分かれて泣くなら、もっと俺好みに泣いてくれよ』
涙でぐっちゃぐっちゃの私の顔を覗き込み、笑いをこらえながらそう言った功司。
『俺好みってどんなの?』
功司の言葉の意味がわからなくて、ひくひくと肩を上下させながら必死で聞いてみた私。
きっとあの時は、功司の側から離れたくなくて、功司のブレザーの裾をぐっと掴んでいたような気がする。
あまりにも切羽詰まった形相だったはずの私に、功司は余裕を感じさせる視線を向けた。
『俺の胸で泣きながら、『功司、離れたくない』って言ってみ?』
私の頭をゆるゆると撫でながら、そして、もう片方の手でごしごしと私の頬の涙を拭きながら。
功司は女の子なら誰もがどきゅん、と気を失ってしまいそうな笑顔でそうささやいた。
きっと、私はあの時、功司にとっ捕まったんだろう。
功司が言った言葉の意味を深く考えることなく、ただ「功司が側にいなきゃ寂しいよー」という思いだけに囚われておかしくなったのかもしれない。
だから、するりと開いた私の口を突いて出たのは。
『功司とずっとずっと離れたくないよー』
見事、周囲の皆々様の耳にお届けできるほどの大きな声。

