「時田さんの鞄、これ?」

会長の言葉に振り向くと、真姫の机から鞄を取って見せてきた。
離れようと体を動かそうとすると、渡さないとでもいうかのように、とも太が抱きしめる腕に力を入れた。
会長が苦笑する。

「合流はいいから、ほどほどにして暗くなる前に帰ってね。それじゃあ、お幸せに」

「わ、あ、すみません」

自分の行為の事実に驚き、声の出ない私の頭上で、とも太が何度もペコペコと頭を下げる。

明日、会長にちゃんと謝りに行かないと。
真姫には今夜、電話をして、たくさん聞いてもらいたい。
でも、今はもう少しこのまま。
このまま、とも太を独り占めしていたい。