怖くなって、気がついたら、由紀子さんを後ろからぎゅっと抱きしめていた。


「もう、どうしたの?」

くすっぐったそうに笑う由紀子さん。


俺は目から涙がこぼれている事に気づいた。

由紀子さんに気づかれないように唇をかみ締め、さらに強く抱きしめた。



由紀子さんは子供をあやすように、俺の腕にポンポンとゆっくり優しく手を当てた。



今、みえないよ。

俺には由紀子さんの表情がみえない。


どんな顔してるんだろう。


困った顔してる?

めんどくさそうな顔してるかな。


怖かったんだ。

いつか、由紀子さんが俺から離れていく。


いつか、必ず、

俺の手の届かない所へ行ってしまう。


そう思ったら、

震えるほど、怖かったんだ。