白のワイシャツに黒のカーディガン、ジーンズ。地味目な自分を姿見で確認して時計をチェックする。8時20分。そろそろ行かなきゃ。
「お姉ちゃん、準備できた?」
隣の部屋をノックする。少しするとドアが開き花柄のワンピースが見えた。
「もちろん」
人懐っこい笑顔の姉、心陽(こはる)が耳にイヤリングを付けながら出てきた。
「おはよう、すず」
'すず'というのはあだ名で本名は渚珠子(すずこ)。ちなみに昔は姉のことをはるちゃんと呼んでいて、いつでもどこにいくにも2人一緒だった。おそらくそれは私たちが双子ということが原因だと思う。小さい頃は2人で1つだと思うくらいべったりして着るものも同じ、好きなことも物も同じだった。でも成長するにつれて雰囲気がそれぞれ変わってきた。
二卵性だったこともあり顔立ちも姉は母に似て美人で明るい雰囲気、私は父に似て地味で暗い雰囲気になり、学校でも別々のグループで行動していた。
高校は別の学校だったが、頭のレベルはほぼ同じだったのか受けた大学は一緒で2人とも無事合格し晴れて大学のある仙台市での2人暮らしをスタートさせた。そして今日はその1日目。8時50分から大学でオリエンテーションがある。