.






「…大丈夫?」


「あ、あ、ありがとう…」


床に散らばっているプリントを踏んで滑ったらしい。
でも、そんなことはどうでもよくて。
最優先すべきはこの状況だ。
彼の体勢は、左手があたしの背中に、右手は自分を支えるために壁へ。
彼があたしに触れているという現実。
焼けるように熱い。


「い、今村君、も、大丈夫だから…離して?」


少し声が震えたかもしれない。
小さな声で、必死に言葉にした。
が、


「…」


「今村く…ん?」


呼んでみるが反応は無く、彼が少しうつ向いているため、表情もわからない。


「…」


とにかく、彼から離れるべくもぞもぞと動く。
彼に自分から触れないように細心の注意を払い、壁を支えに立ち上がる。
彼の手から離れることに成功し、詰めていた息を吐き出した。
その時。



.